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物語

降り積もった雪に清められたクリスマスイブ、
すさんだ街の片隅の古びたバーに若い男がいました。
テーブルに置かれたグラスであたかも自分と世間を隔てる壕を作るように
一人で座っていました。
そこに年老いた紳士がやって来て声を掛けました。
「ご一緒してもよろしいですか?」
男は少し驚いた様子でしたが軽くうなずきました。
やがて、ものの数分もたたないうちに、男は老人の話に心を奪われていきました。
それは神様が天上から目にしたあるクリスマスイブのお話でした。

神の子イエスキリストがお生まれになって2000年以上経ったある日、
神様は一番若い天使に向かって言われました。
「地上に降りて、クリスマスイブの今日行われた様々の善行の中で
一番善いと思うものを一つ見つけてきなさい。」

天使は神様にお辞儀をすると翼をひろげ、
仰せつかった使命のことを思いながら地上へと降りてゆきました。
そこではキリストの誕生を祝して、多くの善行が行われていました。
この日のために戦争は一時休戦となり、大聖堂が建造され、小説も書かれました。
ほんのわずかな時間に、
これら全ての中から一番という行いを見つけ出すことが出来るのでしょうか?
天使は空を舞いながら考えました。
するとその時、遥かかなたから教会の鐘の音が聞こえてきました。
その音色は大変に美しく、天使は神様の声を思い起こしました。

地上を見下ろすと小さな教会が見え、
鐘の音と共に「聖夜」のメロディーが聞こえてきました。
歌声は次第に小さくなりやがて最後の旋律が消え去ると、
一人の澄んだ歌声が響きわたりました。
すぐに別の一人が見事なハーモニーを奏でると、
次から次へ歌声が加わり夜の闇に吸い込まれてゆきました。
天使はすっかり魅了され、しばし翼を休め最後まで聞きほれていました。

再び空を舞い始めた天使は、大きな都市から小さな村まで
いたるところでこれらの音楽を聞き、大変嬉しくなりました。
それは、オーケストラの奏でる音楽であったり、
一人任務についている前線の兵士が口ずさむメロディーあったり、
形は様々ですが、これらの歌が聞こえてくるところには、
人々の心に希望の光が宿っているのに気がつきました。
天使はこの歌こそクリスマスを物語るのに最も適したものだと考えて、
夜の闇に吸い込まれたメロディーをかき集めました。
深く絶望した人々の心に希望の光を投げかけ、
喜びをもたらすものだと考えたのです。

天使はこれこそ神様から命ぜられた使命の答えだと思ったのです。
しかし、この音楽では十分ではないと言う声が心の底から聞こえてきました。
何かもっと他にあるはずだ。
そこで天使は再び夜空を飛び続けました。
すると急に天国の神様に祈りを捧げる父親の言葉を感じました。
見下ろすと子供のために祈る男の姿が見えました。
子供から便りがなくなって随分と時間がたっていたのです。
今年のクリスマスにも戻っては来ないでしょう。
天使は祈りを捧げる男の姿に思いをこめるとやがて、
行方の知れなかった子供の姿が浮かび上がりました。

少女は街角に立っていました。
雪が音もなく降り続ける大都会の中で、
彼女はとても小さくはかなげな存在に見えました。
通りの向こうには古びたバーがありました。
居場所を失った人だけが見つけるすべを知っているような、
そんなバーです。
客達は自分達の飲み物からめったに顔を上げることもなく、
だから少女のことなどまったく気がついていない様子でした。
バーテンダーは、誰も彼がいつからここで働いているのか思い出せないくらい長く
このバーで働いています。
彼が信じているのは自分のバーとキャッシュレジスターのみ、結婚もせず、休暇を取ることもなく、
客達は彼がカウンターの後ろから出たのを見たことがありませんでした。
客が店に来た時、彼はすでにカウンターの後ろにいて、最後の客が帰る時も、
まだそこにいました。
ツケは一切お断り、酒で自分の周囲に壁をめぐらせているような客達に
75セントで一杯のストレートウイスキーを出し続けていました。
このバーの主人は客達にとって安心できる、いつもと変わらない世界を提供しているのです。

急にドアが開き、いつもと変わらない世界に小さな子供が入ってきました。
このバーで子供の姿を見かけたのはいつの事だったでしょうか。
バーテンダーがどうしたのかと問う前にその子供が、
ドアの外に家に帰れなくなった少女が立っているのを知っているかと尋ねました。
外を見ると確かに通りの向こうに少女が立っているのが見えました。
バーテンダーは何で少女が家に帰れないと分るのかと子供に聞くと、
子供はいいました。
「今夜のような特別な夜は、家に帰れる者はもうとっくに帰っているはずだよ」
バーテンダーは少女の方を見ると、少年の言ったことについて考えていました。
しばらくすると彼はレジスターにあったお金を集め、
カウンターの後ろから出てくると子供の後を追ってバーを出てゆきました。

バーにいた客はバーテンダーが少女と話すのを見ていました。
すると彼はタクシーを止め少女を乗せると、運転手に「JFK空港まで」と告げました。
タクシーが遠ざかると彼は先ほどの子供を捜しましたがどこにもいません。
さらに不思議なことに彼の足跡は雪の上にはっきりと残っているのですが、
子供の足跡はどこにも見当たりません。
バーに戻ると彼は子供がどこに行ったか見た人はいるか尋ねました。
しかし、走り去るタクシーは見ているのに、
誰一人として子供の姿を見ていた人はいなかったのです。
そこにいた人が後日話したことには、不思議なことがいろいろ起きた夜だったが、
最も不思議なのはその夜、誰も酒の代金を払わなかったということでした。

その夜遅く天使は天国に戻り、主の御手に人の幸せを願う心を置きました。
天使が見つめていると主のお顔には微笑が広がりました。

老人は語り終えると、楽しいひと時を過ごしたけれどもう帰らなければ、と若者に伝えました。
老人が立ち去るとすぐに若者は後を追い名前を聞こうとしましたが、
ほんの数秒しか経っていないのにすでに彼の姿はなく、雪の上に足跡も残っていません。
若者は一瞬困惑してその場に立ち竦んでいましたが、
すぐに穏やかな安らぎと、満たされた感覚に体中が包まれるを感じました。
やがて若者はコートのボタンをかけると家に向かってゆっくりと歩き始めました。
こうして彼は子供の時以来、初めてクリスマスの夢を夢見たのでした。
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11/17|Trans Siberian Orchestra - Christmas Eve and Other Stories 1996コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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